ライブ記「7.28下井草Billy’s Barにて」

7月28日、
グッナイ小形のライブを見に行くため、
休みをとっていた。
グッナイ小形とはどういうミュージシャンなのか、


僕との関係については、後日じっくり書くつもりなので、
今回はまだ熱の冷めないうちに
ライブを見て感じたことを書きます。

東京の下井草は初めて行った。
結構乗り換えが多くて、時間もかかったけど
駅前はいろんなお店がまとまっていて、いい雰囲気。
まだ昼と夕方の間のような時間だったけれど、
駅前の寿司屋で少し飲んだ。
東京のお寿司は小さいと聞いていた、
確かに北海道と比べれば小さいけど美味しいじゃん。
まだ時間があったので、
「ムンク」というジャズのかかる喫茶店でコーヒーを飲んだ。
北海道の友人にハガキを書き、
品田映画評論の下書きを書く。
ビル・エバンスの「ワルツ・フォー・デビー」や
バド・パウエルの「クレオパトラの夢」
エロール・ガーナーの「ミスティ」が続けてかかった。
まるで「初心者のためのジャズ入門」のような選曲
マスターは、特にジャズファンというわけではないのかな。

開場の18時には下井草駅前から
徒歩2分のBilly’s Bar GOLD STARに着いた。
入り口からスカル、骸骨、ドクロの飾りや
置物がたくさん置いてあって、
ヘヴィメタルファンのオーナーなのだろうかと思わせる店内だ。
まだ店内には、演者と思われる数人しかおらず、
特に演者も控え室にいるわけではなさそう。

この日は、4マンのライブイベントだった。


【出演者】陽だまりの猫、シラフ、グッナイ小形、阿部浩二  
ヒューガルデンの瓶ビールを飲みながら、小形と雑談をした。
僕は小形目当てで来てたおり、他の出演者は知らなかった。
「阿部浩二さんはすごいいいよ、ライブ見て泣いちゃった」と
彼は言っていたので、他の出演者も楽しみにしていた。
これは見てからわかったことだが、
最初の2組はプロというよりは、
普段は仕事をしていて、休日に音楽活動やライブ演奏をしている
アマチュアのような人たちだっただと思う。


陽だまりの猫は、
TRFのDJ COOのような風貌のおじさんと、
中村あゆみ的カッコいい力強い女性シンガーが
どちらもアコースティックギターを弾きながら歌うユニットだった
(彼らがこのブログを読んでいないことを祈ろう)
演奏的には、フォークソングのような響きに近いのだが、
彼らのオリジナル曲は
90年代の邦楽ポップ・ロック的なメロディで、
どれもありがちだけど耳に馴染む曲だった。
歌も「翼の折れたエンジェル」的感じで、プリンセスプリンセスやリンドバーグなんかが好きな人なのかと思ったけど、歌詞やメッセージの単純な感じも、不思議に嫌悪感なく聴けてしまう感じ。
なんだかふと 東京の、下井草の、小さなバーの、
この空間に不思議な時間が流れているなぁと思ってしまった。

シラフは、フォークのシンガーソングライターのおじさん。
正直、これはあまりいいものではなかった。
なんというか、ちゃんと歌っていなかったので、聞いてて辛かった。まるでリハーサルのような練習のような感じで歌うので、
歌詞も入ってこなくて残念だった。
(彼がこのブログを読んでいないことを祈ろう)
ただ一番最後にやった曲が
(確か「仕事の負け犬?」みたいな曲名だったと思う)
仕事に行きたくない気持ちを歌った歌はよかった笑 
「仕事に行く前のコーヒーと、休みの朝に飲むコーヒーはおんなじなのに、どこか一味違う気がするぜー」みたいな歌詞に妙に納得してしまった。
日曜の夜で、みんなが明日仕事の中、
あの曲が少しみんなに一体感をもたらしていた。

そして、お目当のグッナイ小形の登場である。
この日はビデオを撮り、録音するつもりで、
事前に彼にもそう伝えていた。
近いうちに彼のミュージックビデオを撮れたらなと思っていて、
どんな風にカメラに収まるのか、
今日はその予行練習の意味合いもあった。
彼の演奏中はほとんど画面越しで、
あまりちゃんと見れてなかったのだけど
帰りのJRで録音したものを何度も聞き返して、
家でも映像を見返していた。

【演奏曲目】
1、そばにいて
2、1814
3、つかれちゃった
4、病気
5、ぢうまんねん
6、十七歳
7、夜行列車
8、ギブミーダンス
9、地獄
10、きみは、ぼくの東京だった。



やはり彼の曲はいい。
彼は作曲を始めてから何百曲も書いているけど、
コード進行のパターンは極めて少ない。
それでも、その手癖のようなコード展開から、
新しいいい曲たちが次々と産まれるのを
この1年の間に何度も見て来た。
そして、歌詞。いいラインを書く。
以下、各曲についてのコメントを。

1、「そばにいて」
“悲しい時は 嬉しい時は そばにいて そばにいて”
”青い時も 赤い時も そばにいて そばにいて 
ぼくがきっと見てるから きみをそっと見てるから”
彼の歌詞で、結構こういった並列の表現が使われる。
1番と2番で並列する時もある。
歌謡曲でもよくある手法だけど、こういった表現は、
シンプルだけれど詩的でグッとくる。
ずっとずっと繰り返し繰り返し
「そばにいて」と謳われていたメロディが
最後だけ「ありがとね ありがとね」に変わるのだが、
これが効く。

余談だが、youtubeにこの曲を高円寺の自宅で彼が弾き語りしている動画がアップされたが、
このライブの時の歌詞の方がうんといい。
というかそっちはよくない。

2、「1814」
「会議は踊る されど進まず」が有名な
ウィーン会議が開かれたのは1814年。
この曲の最初はその文字り
”暮らしは踊る されど進まず 我が人生は酒樽に沈む”で始まる。
自主製作第2弾のミニアルバム
「死ぬほど生きたら、死にたくなった」には、
自分で何度も声を重ねた軍歌のようなアレンジで収録されていた。
こちらは断然弾き語りの方がいいし、
この日はテンポも早めでとても軽快だった。
彼が作る曲には、こういう「暮らし讃歌」のような曲が多い。
星野源は初期が好きと言っていたが、
ちゃんと生活や労働、暮らし、愛を歌うシンガーだと思う。

3、「つかれちゃった」
おそらく現時点で、一番新しい曲だと思う。
埼玉のライブハウスで配布される
コンピCDに収録される予定のようだ。
最初に聞いた時、7月のワンマンで聞いた時よりも
今回の疾走感じが良くて、いい曲だと思った。
彼のレパートリーの中でも一番勢いがあるし、
コードもめまぐるしく展開する。
“君はただギュッとしてほしいだけさ 
君はただギュッとしてほしいだけさ
だから待っててね 今、夜明けを抱きしめて”と歌うラスト、
一度ブレイクするところもドラマチック。

4、「病気」
これも比較的新しい曲だと思う。
今年の春に「すごくいい新曲ができた」と言い、
この曲を弾いていたが、歌詞なのかそれぞれのメロディのつながりなのか、何かが定まらず、
あまり演奏されなくなってしまった曲だった。
今回、聞いて完成したんだと思った。
“君も僕も病気だよ ずっと治らない病気だよ 
愛されたくて仕方がない 認めてほしくてしょうがない
ぶっ壊れそうな車輪の上、素っ裸で抱きあって
どこまでも行こう どこまでも行こう 
このまま二人でどこまでも行こう”
ライブの日の夜に、少し彼に連絡をしたが、
「「病気」だけ映像欲しい」と言われた。
本人としても手応えがあったのか、
外から見るとどう聞こえていたか興味があったのか。

5、「ぢうまんねん」
かなり古い曲で、来年公開される
インディペンデント映画の主題歌にも決まった曲。
“僕らはいつでも待つよ 二度とない幸せをいつも
雨が降っても待つよ 少し寂しくはなるよ
忘れちゃえ 忘れられないよ 捨てちゃえ 捨てられないよ
恥ずかしい 大人になったよ 壊れそうな大人になったよ 
大人になったよ”
「忘れちゃえー」「捨てちゃえー」で声をはって歌い、
「忘れられないよ」「捨てられないよ」で告げるように歌う。
世界すべてのことも、自分のことも、
壮観のように浮き彫りにするような曲だと思う。


6、「十七歳」
これはいい曲だよね。結構長い間、
よく演奏されるであり続けてると思う。
どこの歌詞も好きなんだけど
“「疲れたね」って言い過ぎた 「お疲れさま」って慣れ過ぎた
 私こんな夜 久しぶり 一人で帰るの寂しいわ”ってところは
ワンマンの時に聞いた時も涙が出そうになるラインだったな。
彼の演奏スタイルはコードを押さえて、分散して弾いたり、開放弦・ハンマリングプリングで
響きを作る奏法が多いんだけど、
何曲か指で爪弾くスタイルの曲がある。
「そばにいて」もそうかな。
その中でも、この曲は演奏も完成されてると思う。

https://youtu.be/_B0sViZ4IPw


7、「夜行列車」
彼が小樽で学生やってた頃からある曲。
こないだ小形と数時間話していた時に、
俺が覚えている曲、好きな曲、一言言いたい曲など
どんどん曲名を挙げて、今はどう思ってるのか尋ねた夜があったんだけど、
「夜行列車は自分の中でも一番いい曲の一つだと思ってる」と言っていて嬉しかった。
僕も最高に美しい曲だと思うし、
小樽時代から大のお気に入りだった。
最近はわりとシンプルな言葉選びが多いけど、
彼がとくに友部正人に心酔していた時は、
出てくる単語もユニークだった。
“とても空っぽな夜と、涙を流した朝が手をつなぐ
僕は君の匂いのする電信柱を見つけて 毎朝その道を通って仕事へ向かう”という歌詞なんか
絶妙だし、今の歌声で聞くとなおさら強みが増していたな。


8、「ギブミーダンス」
「十七歳」やこの曲のように、
女性視点の歌詞が数曲あって、これがなかなかいい。
髪もじゃ髭もじゃのジーザス・ホームレス・クライストのような彼なんだけどね。
シンプルだけど、どんどんエモーションが加速していく曲。


9、「地獄」
いちばんしか短い曲で、
そのまま「きみは、ぼくの東京だった。」に繋がる
こういう小品のような前奏曲のような曲ってあるよね、いいよね。
スピッツの”8823”の「今」みたいな。
ビートルズのサージェントペパーズみたいな。
でも多分、小形的には森山直太朗なんだと思う。
めちゃくちゃいいのに、いちばんしかない。
そんな曲、あったよね。
”お前の身体は世界でいちばんきれいだったよ 
お前の髪の毛は世界でいちばん柔らかかったよ
お前のカレーは世界でいちばん美味しかったよ あの世のように”

10、「きみは、ぼくの東京だった。」
https://youtu.be/pZVjk7yEOvw
グッナイ小形の代表曲。歌もいつもいいから、
これについてはとくに今更書くことないですよ。
いろんなミュージシャンがどんなライブでも必ず演奏する曲ってあるでしょう。
誰をも納得させる一曲、それがこの曲であるのは間違いないね。



今回もいいライブだったと思う。

次は8月10日の新高円寺でのライブだな。



最後はそのまま阿部浩二のライブをみた。




ぼくは小形が友人だから、それ目当てで来ているけど、
誰も知らない人がこの4マンを見たら、
誰もが阿部浩二の歌に圧倒されていたと思う。
見終えてわかったけど、このライブは4マンというより、
グッナイ小形と阿部浩二のツーマンで
陽だまりの猫とシラフは前座だと思う。
(どうか彼らよ、このブログを読まないで!)

このライブの前に少しyoutubeで数曲聴き、
今年赤坂BLITZでワンマンやったことを知っていて、
少しは楽しみにしていた。
メロディの掴み方、歌詞が直に耳に心に入ってくるところ、
はっきり通る歌声
さすが年間300日以上ライブをやっているだけあって、
プロのミュージシャンだった。

最初に演奏したのは「白線」という曲だった。
品川駅の前で路上で歌っていたらJRの駅員に「こっちは敷地内だから白線の外でやれ」と言われたことから、どうして場所が白線で、地球が国境線で区切られているのだろうと歌い始める曲だった。フォークソングらしいプロテストソングに一見聞こえるけれど、その大きな視点と、駅前で歌う彼の小さな点、歩道の白線と国境線の対比が、曲のメッセージをすごく身近に感じさせた。

“みんながみんな君のように素直にあやまれたら
白線なんていりません 国境線なんて僕には見えません”

2曲目は「ワレワレハドコニムカッテイルノダ」という曲で、
まあ歌詞がすごい。
歌詞というか、今年の前半に彼が感じていたことを
研磨せずに、よそ行きの服を着せずに、
歌に落とし込んだものだった。
他者と自分自身に怒り、奮い立たせる語りのような曲だ。
この曲に関しては、家に帰ってCDでも聞いたけど、全然違った。
生で聴いたこの曲は本当に叫びみたいだったし、
ギターの弦も切った。切りにいってたと思う。
この曲は今のところ、ライブか
彼が手売りしているCDでしか聞けないが、聞く価値あり。
ただ、結構この曲の持つ牙はこっちに向くときもあるから、
聞くのに覚悟がいる。

自分より正直な人を見るとハッとするよね。
自分も嘘なんかつかないし、思ったことはいう方なのに、
自分が言えなかったことを言ってる人にたまに出会う。
この曲がそうだった。
自分も思っていたはずなのに、
無意識に葬り去ってたことが以外とある。
目を向けたくないこととか。
それに眩しいぐらいスポットライトを当ててくるのが、
この曲だと思う。

全てほとんど初めて聞く曲だったので、
曲名もあまり覚えていないけれど
「大学芋」や「遮光カーテン」は
誰もが一聴すればいいと思う歌いたくなるメロディの曲だから、
気に入る人は多いと思う。
でもこの人の曲は、youtubeで聞くより、
生の方が3倍良いし、こちらに本質がある。


阿部浩二の歌は、
前半では真実は尖って歌われ、
後半では真実が優しく歌われていると思う。

「ワレワレハドコニムカッテイルノダ」という曲は、
これは説教なんじゃないかと感じるくらい凶暴な曲だけど、
何度も何度も何度も歌われる叫ばれる
「自分のために自分の歌を唄え」は
阿部浩二が自分に諭しているようにも聞こえてくる。
優しく言い換えるなら
「みんな、自分のために自分の歌を唄おうよ」と。
「白線」と言う曲も、どうしてみんなの土地が区切られてるの?と怒りを歌うけれど
それは駅員に謝ることもできない自分のちっぽけさが、
人間のちっぽけさが
回り回って世界を線だらけにしまっているという風に見えてくる。

「あむうぇい」という曲もやっていたけど
この曲は、友達に「アムウェイ入ってよ」と
し つこく勧誘されたことが一番で歌われるが、
ライブ来てよと友達を誘う自分同じなのかもしれないと
2番では歌われる。

誰かに向けた怒りが、自分に返ってくる。という構図。
でも、この自覚が大事なんだよね。
これを自覚できることにどれだけ価値があるか。
素晴らしいミュージシャンだと思う。
わかる人にだけわかるように言うなら、
ボヘミアンラプソディより良かった。

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【あとがき】
毎度毎度、今回も長くなりましたー。
DJクーの話まで書いちゃったし、
グッナイ小形本人でもないくせに全曲解説までしちゃうから、
このボリュームになっちゃうんだよね。
投稿する前に写真やリンクを貼り付けたのですが、
うまくいくかな。

まあでもこのブログを始めた時から、なんとなく
添削とか要約とかはしなくていいなあと思ってたので、
書きたいことがあって、それを覚えているうちは、
冗長になっても記そうと思います。


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