映画短評「アルキメデスの大戦」


始める前からわかってはいたのだけれど、
映画ブログを書くほど映画を見ていないマイライフ。

7月、8月は10数本の映画は見た。
けれどパソコンに向かい、
それについて書くというのは
日々生活していると
なかなか高頻度ではできないことなのだな。















自分の中で、
「一本の映画について書くなら、せめてこれぐらいの~」という
ハードルというかクオリティみたいなものがあって、
原作は読まねばとか、一度しっかりと考察をせねばとか
そういうしょうもないこだわりが
自分を何も書けなくさせているのだろう。

もともと、キヤクオリティには
何のブランド力も商品価値もないのだからいいじゃない。
まとまりに欠けてもいい、とりああえず書こう。


ーーー

ここ最近劇場で観て特によかったのはね
『アルキメデスの大戦』






まず、すごく面白かったということと、
あまりのエンディングの混沌とした凄みに、
帰るまでの間しばらく呆然としてしまった。

東宝製作の大作で、監督は山崎貴。
『ALWAYS3丁目の夕日』シリーズや『永遠の0』
『STAND BY MEドラえもん』の監督である。
自分でCGとVFXやるし、ちゃんと映画をヒットさせる男。
邦画界でやり手の映画監督というのは、
映画ファンからの評価はさほど高いものではない。

【持論1】
そのジャンルにおけるコアなファン層というのは、
ヒットメイカーかつ有能なクリエイターを
なかなか認められない病にかかりやすいと思う。

似た監督でいうと、
大友啓史(『るろうに剣心』)
羽住英一郎(『MOZU』『暗殺教室』)
佐藤信介(『GANTZ』『図書館戦争』)など
興収30億円以上の作品をいくつも出すヒットメイカーであり
邦画界で洋画に挑むような大作に挑戦する監督たち。
だが、映画好きと話していても、
僕はこの4人の名を
好きな監督に挙げている人を聞いたことがない。

一般層は、監督の名など気には止めないし。
映画ファン層からも正しい評価を得られにくい。
ある意味で孤独な監督たちだと思う。

《ここで一度 映画レールから脱線します》
音楽の方向に少し話は逸れるけど
少し似たケースとして、星野源の話をしたい。
歌、作詞・作曲、ギター、マリンバ、俳優、執筆業、
シングル・アルバムもちゃんとトップ3入りするミュージシャン。
アイドルでもなく、奇をてらった曲名グループ名でもない、
様々な音楽的素養もある星野源を、
なかなか好きになれないという、
なぜだか聴く気になれないという
音楽ファンを僕は何人か知っている。
かくいう僕もそうだった。

コアなファンというのは、自分たちが本当にいいと思うものほど
世間的に全然評価されないということを感じている。
だから人気なものへの懐疑心が強い。
それになぜかコアなファンというのは、
アーティストはストイックで職人的であることを望む。
だから、手広くやることにあまりいい顔をしない。
しかし、それはアーティストや作品評価とは関係ないわけで
そのアーティストの作品がヒットしているか、
どれほどストイックか、などにこだわっていては
カルチャーの壁は狭まるばかり。
単純に、作品を見よう。
そんな気持ちの変化があって、自分は
星野源、ジャニーズ、人気のバンドも聞くようになった。
ただ、それでもいいものは少ないと思うけど。

このようにコダワリガンジガラメのファンと
そういった世間的ポジション/他者評価など関係なく
音楽や、映画、文化を愛せるファンには
それぞれ別の名前をつけたい。
みんな後者への脱皮が必要だとも思う。
《再び 映画レールに戻ります》

映画監督というより、ヒットメイカーという印象の強い
山崎貴への評価は、個人的にここ数年で変わった。
近作の『海賊と呼ばれた男』『DESTINY 鎌倉ものがたり』が
認めざるを得ない面白さだった。
※ついでに佐藤信介も『アイアムアヒーロー』と
『いぬやしき』の面白さには感服した。

そして最新作の『アルキメデスの大戦』

実写化が夏に公開されると知り、
三田紀房の原作コミックを今年のはじめに読み始めた。

話はめちゃくちゃ面白いけど、この映画化は難しいと感じた。
その理由は、よくいう「映像化不可能」とかじゃなく、
ここまで地味な話だと、メジャー映画にならないだろうと。

映画のメインビジュアルには
監督の過去作『永遠のゼロ』を意識して、
巨大戦艦が中央に据えられている。
しかし漫画を読むとわかる。
これは日本を戦争へと向かわせる
巨大戦艦を造らせないために、主人公たちが奮闘する話。

「巨大戦艦」とは主人公たちが必死に建設を阻止するものだから
これが映画に登場するということは、
結末をポスターにしてしまっているようなものである。

スーパーヒーロー映画のポスターが
完全に地球が壊滅し、
人類が全滅しているデザインを採用するだろうか。
ゆえにこのデザインには少し不安があった。

巨大戦艦を造らせないために、
主人公は、わずかな情報を元に
決して閲覧できない戦艦の設計図をゼロから予想し、
その高額な建設費を白昼の元に晒し、
戦艦建設の計画を白紙にさせようとする話。

なので、メインは会話劇であり、多くは密室劇だ。
だからこれは映画になるのだろうか。と感じた。

三田紀房の漫画は「インベスターZ」「ドラゴン桜」など
話の展開はすごい面白いし、
知識や情報が各シーン各シーンに練りこまれている。
読者は楽しみながら
自分たちも頭が良くなっていくような快感を得る。
しかし、会話劇が中心ゆえに漫画としてのダイナミズムがない。
ひたすらキャラクターの話顔の切り返しが続く。
だから三田もまた、
それほどコミックファンからは支持されていないと思う。

しかし、映画は躍動のメディア、
この緻密なシナリオをベースにすれば、
素晴らしい知的興奮をもたらす娯楽映画が誕生するかもしれない
それは映画版への少し期待していたことでもあった。


実際、見て見たら
山崎貴はこの漫画の第一部を
最高の形で一本の映画に落とし込んでいたし、圧巻だった。

この映画をみてやはり評価したいところは、
山崎貴がこの原作に何を削り、何を加え、どうアレンジしたか。

その手の加え方が最高だった。
それが【オープニング】と【エンディング】と【主人公像】だ。

ここを除く前半~後半は、コミックに忠実だし、
流れを知っていても興奮できるストーリー展開だ。


【主人公像】をかなり変えていたことは、
「カイタダシはこんなキャラじゃない」とか、
「帝一の国みたいだ」とか批判もあるかもしれないが、
これはいいアイディアだったと思う。
コミックのようなまっすぐで正義感の強い主人公では、
この大作を引っ張るパワーはなかったかもしれない。
彼の弾け方が、ここまでの興奮をもたらせてくれたし、
エンディングのひっくり返しが、いいコントラストを生んだ。

【オープニング】

ここでなぜポスターの中心に巨大戦艦を据えたのかがわかる。
日本の戦艦「大和」が
アメリカ軍から激しい空爆を受け、沈没していく。
何百人もの日本兵が酷く死んでいき、海は血の色に染まる。
 「あ、プライベート・ライアンだ」と
多くの映画ファンが感じるオープニングだと思う・
正直、映画を見ていた時はうーんという感じだったけれど、
全て見終えて、このオープニングは大正解だったと思う。

「巨大戦艦は造られてしまった」
悪夢のような光景から映画が始まり、
12年前(確か)へと時は戻り、カイタダシらの奮闘が始まる。

このように
ストーリーの結末を冒頭で見せてしまい、
どうしてこうなったかと遡る構成を取っている。
例えばアル・パチーノの『カリートの道』がそうだった。
パチーノが駅のホームで銃撃され、
血を流し命を落とそうとしている。
どうして彼は死にかけているのか、数年前に遡る。
彼は服役を終えた麻薬王で、
闇の世界からは足を洗い、堅気に戻ろうとする。
全てのしがらみを断ち、
恋人とバハマで静かに暮らそうとするが
周囲の人間が彼をまたマフィアの世界に引き込もうとする。
彼はその運命から逃げられるのか....。

しかし、観客は彼の最後を知っている。一度は見ている。
だから彼がその逃れられない運命からもがく姿が切ない。
結末をわかっていても希望を感じてします。

よくネタバレがどうとか言う人いるけど、
僕はあまり物語の本質は、結末にはないと思う。
映画はマジックじゃない。
だからちゃんと作られた作品は、結末を知っていても面白い。
また、ちゃんとしたマジックは。タネを知っていても美しい。

映画にとっては結末がネタなのではなくて、
2時間がどう流れていく、
何が語られるか、何が写っているかがネタなのだから、
誰かがどれほど詳しく展開を話したところで、
全くもって映画のネタはバラされていないと考えてほしい。


『アルキメデスの大戦』も、
オープニングが結末になっている。
こうなると、僕らにとってはどうして
この結末が導かれてしまったのかと、能動的に観る。
この話の構成はとても映画に、この映画に向いていると思った。
第2次大戦の結末は誰もが知っているわけだし。



【エンディング】

いやー、これは圧巻だった。
マンガはこのまま第2部へと続くので、
1部の終幕にはオリジナルのエンディングが必要になる。
幕切れとして、これ以上のものはないと思った。

特にオリジナルの創作をしているわけじゃないのに
ちゃんと2部以降のテーマも込められているし、
けれどちゃんとエンディングになっているし、
この続きが僕らに委ねられていてゾッとしてしまう。

面白い映画の定義ってなんだろうと
たまに考えることがあるのだけれど、
ここ数年間違いなくこれだなと思う一つは、
「表裏とは一体であることが描かれていること」だと思う。

善人vs悪人、勝ち組vs負け組、成功vs失敗、右翼と左翼、など
物事の表側と裏側が分離されたままで終わってしまう映画は
そのあとに何も残らない。
なぜならそれは嘘っぱちだから。

正義だと思っていたことが誰かを傷つけていたこと、
犯罪だと思っていたことが誰かを救っていたこと、
富裕層の人々が、心の中では不幸だったこと、
貧しくとも、彼らなりの豊かさがあったこと、
成功も失敗も、ある視点からそう見えているだけだったこと、

 僕らが生きている世界は、
社会はこんな反転を年がら年中繰り返す。
全ての物事に白と黒がハッキリ分かれていたら
僕らはこんなに悩まない。

断言するけど、この世に純粋な白と黒はなく、
全員がグレーかもしれないし、
世界をもっと美しいものと見るのなら
みんなが三原色かもしれない。
映画もそれを描いてほしい。

『アルキメデスの大戦』も終盤、それまでのことが反転する。
この驚きが面白い。

何がひっくり返るのかは、見て驚いて欲しいから書かないよ。

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見てからもう2週間経つので、少しずつ記憶が薄れているけど、
見た時に何回も何回も思ったのは、
「これ、今とそっくりじゃん」だよね。

舞台挨拶か何かで監督が
「終戦記念日の時期で、多くの人が戦争について考える時期だから
 この夏の時期にどうしても公開したかった」と言っていたけど
こないだの選挙で浮き彫りになった
今の政治の構図と驚くほど似ていた。

不正の証拠を突き詰めても、なぜか失脚させられない体制とか…。

これがだんだんと戦争に向かっていく時代のお話なら、
今の僕らも戦争に向かっていくとしか思えない、
そういう恐ろしさもあるエンディングだった。



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今回は、最近見た映画数本の短評を書くつもりが
思ったよりもアルキメデスに熱が入ってしまったので、
このへんで筆を止めておきましょう。


こないだ、友達と選挙の話してたら、同席した友人が引いていた。
「あまりそういう話はしないほうがいいよ」と言われたり、
ある人には友達じゃないふりをされたりした。

ここ最近よく感じるけど、みんな話題をジャンルに分類して
それが「政治」「宗教」「下ネタ」だった時の
見て見ぬフリ感が恐ろしいなと思う時がある。
みんな目が黒目になってしまうような、嫌な感覚。

立場を明確にしないことで逃げる。
いじめを目の当たりにしても、何もしないような感じ。

話題に限らず、ジャンルの分類化というのは危険だと思う。
先ほどの表裏一体と同じで
「明日は休日だから、友達とランチを原宿に食べにいく」と
「政治」はかなり近く繋がっていると思う。

大好きなことにお金を使うことと、恋バナやディズニーランドも
「宗教」と隣り合わせだと思っている。

おっぱいやちんちん、セックスや生理を
「下ネタ」として軽蔑することが続くなら
男と女の間に流れる川は、
やがて僕らの住む街を水没させるかもしれない。

みんな全部繋がっている。
君が大好きなことと大嫌いなことは
遠い親戚であり、実はお友達だったりする。



Same Dream ,Same Destination.

コメント

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