詩「彼の人生における4つの瞬間」
リバーサイド、僕がすむアパート。
空はオレンジから青に変わってく。
堤防を歩く人たち、自転車、犬。
うちのベランダから夕暮れの景色が見える。
火にかけた鍋から、泡が吹きこぼれた。
今夜の料理をつくってる。
まだ部屋の電気はつけないよ、
明かりをつけたら、さみしくなるから。
今日がもう夜になってしまったと、
認めてしまうことになるから。
ダウンタウン、彼女がすむマンション。
ベルを鳴らしても返事はない。
仕方がないから、どこかで時間をつぶすよ。
オンナもののお店しかないファッションビルで、
僕はゆっくり階段を降りたり、登ったりした。
ボタンをはずし、タイをほどき
ゆるんだ顔したホワイトワーカーが、駅に溢れかえる。
きっとこの都市に、僕は似合わない。
なぜだか、今のきたないアパートが好きなんだ。
クラリネット、放課後の教室からきこえた日。
僕は校庭で野球を見たふりして、耳をすましてた。
ヤンキーみたいな先輩が近づいてきて、
僕を見て、いろいろ聞いてきた。
ギャツビーくさいおデブさんが「調子にのるな」と僕に言う。
「はい」と答えたら、最後は笑って帰っていった。
ここんところ、
めっぽう調子のよくない僕には、関係ないよ。
今日は、彼女のブレスも乱暴だ。
タイムライン、ながめてる彼女とその指先。
君のともだちが楽しんだり、悲しんだりしてる。
彼女の指先は、それをすいすい飛ばしてみせた。
「今日はなにかあったかい」と僕が聞くと
ソファにもたれかかる彼女は
今日会社で自分が提案したことを、
社長がほめてくれたと話しはじめた。
「へえ、そうなんだ。よかったね」と僕はいった。
冷たくも、温かくも言えるその言葉を
僕は精いっぱいあたたかく彼女に言った。
もう、タイムラインは上にスクロールできないのに、
彼女は指先を3度上下に動かした。
そうだよね
たった今、誰かがつぶやくかもしれないもんね
僕はそう、心の中でつぶやいていた。

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